音楽室は静まり返ってた。
誰もいない
私が一番乗り。

みんなが集まる全体練習の時はぎゅうぎゅう詰めで、背中に響くドラムの音に押されちゃうけど、今は広々としていて自分だけの音楽室って気がして嬉しかった。

五時間目終わりですぐ顧問の先生が、楽器置き場の鍵を開けてくれるので、私はすんなりと教室の奥にあるドアを開いて灯りを点ける。すると棚にある楽器たちが目を覚まし『早く開けて』とケースの中で声を上げる。

私は背を伸ばして
棚から黒い大きなケースを取り出し
広い音楽室に戻ってパチリと口金を開けた。

金色のアルトサックスがワクワクした表情で私を見るけれど、ごめんねあなたの出番はまだなの。私は黒いマウスピースだけ取り出してケースを閉じ、またドアを開いて棚に戻す。

後からまた会おうね。