「笹原さんの名前ってさぁ、ココアって読むんだよね」
平子君に聞かれて胃がチクチク。
心の愛と書いて【ここあ】
ないない
ありえないキラキラネーム。
命名はコミック大好きなお父さん。
他人事なら可愛いけれど
いざ自分の名前になると恥ずかしい。
こんな平凡な顔で心愛なんて
とっても恥ずかしい。
またネタにされるのかな
嫌だなぁって思ってたら
「スゲー可愛い」
平子君は楽しそうに言って笑った。
その笑顔はバカにした感じじゃなくて
裏表がない笑顔で優しかった。
平子君は仔犬系の顔してる。
「やっぱココアが好きなの?」
真面目な声で伊田君が聞くので、正直に「ほうじ茶が好き」って言うと、中原君と平子君が爆笑する。
「うちのばーちゃんと同じじゃん」
「えっ、俺も好きだけど」
「たしかに伊田はそっち系」
「ほうじ茶に謝れ」
どんなネタでも盛り上がるのが男子なのかな
怖い怖いと思っていた3人が、ごくごく普通で優しい人達かもしれないとちょっと思い、少しだけ私の固い殻にひびが入って、新鮮な空気が送り込まれた気分になった。



