「食欲ないの笹原さん?大丈夫?」
斜め向かいの席から平子君は心配そうに私に聞いて、身体を私の方にのり出した。いつもふざけて笑ってる平子君のこんな顔を見るのは初めてで、余計に私は緊張してしまう。

伊田君も振り返って
男子3人の目は、一気に私に集中。

どっ……どうしよう
注目が怖い。逃げ出したい。

こんな時
田口さんや野村さんなら上手に返事をして、会話を繋げて楽しく過ごすんだろうけど、私には無理かも。

今の私は、言葉より心臓で返事をしている気分。

「保健室行くか?」

伊田君の言葉に我に返る

ただ単純に心配してくれてるだけなのに

私の態度は失礼だ。

「大丈夫だよ。ごめんね元気です」

返事をしなきゃという義務感でやっと声を出すと

「初めて笹原さんの声を聞いた」って、中原君は笑顔を見せた。

その笑顔は女子がよく言ってる王子様顔で、くしゃっとした笑顔が優しくて茶色い目が綺麗で、思わず見惚れてしまうような顔で……私は泣きたくなるほど困ってしまった。

どうして困ったのか
自分でもよくわからない

ただ
これから先に溢れる
めんどうな感情にフタをするのに苦労するだろう……って……直感が働いた。