誰かがどこかで救われる


学校の空に一番近い場所。

私と平子君は横に並び、胸元ぐらいある高さの壁に手をかけて校庭を見下ろす。

「屋上初めて?」

「うん」

ゾロゾロと生徒が下校する。

小さな豆粒が傾斜の低い方に転がるように、人の群れは解放されて校舎を出て行く。

「上から見下ろすって不思議な気分」
興奮気味に私が言うと
平子君は「うん」って一言。

いつも明るく元気な平子君らしくない。

「伊田君だ」

背の高い伊田君は上から見ても目立つ。
猫背気味なんだ。
後ろの方で一年女子が伊田君を見て可愛く騒いでた。
見えない部分が見えるのって楽しいね。

じーっと観察していたら
杏珠と中原君の姿が見えた。

ほどよい距離で並んで歩いてる。

上から見ても
完璧なツーショット。

オーラあるなぁ
お似合いのふたり。

知らないうちにタメ息が出たのだろうか
平子君が私の頭を軽くポンポンして「失恋仲間」と、つぶやいた。

「そんなんじゃないよ」

「無理すんな」

そんな会話をして
またふたりで校庭を見下ろす。