「今日は誰もいないから大丈夫」
「早く帰らないと先生に怒られるよ」
「すぐ帰る」
「怖い三年生がいるもん!」
「いない!先輩にお願いしたから問題ない。今日は俺の貸し切り!」
平子君はそう言い切って真正面から私を見た。
その真面目なちょっと怖い雰囲気に飲まれてしまった私はつい「わかった」って返事をして、平子君を背中に感じながら屋上へと向かう。
強引だよ平子君。
本当に怖い人達いない?
逃げられない私は屋上へと続く階段を上り、扉を開けて空を感じた。
「うわぁ」
空が高い。
誰もいない。
広いアスファルトが続いてる。
思いきり走りたくなってしまう解放感。
誰もいない屋上なんて初めて
いや屋上なんて
この学校に入学してから初めて足を踏み入れた。
「気持ちいいね」
風もそよそよ心地よい。
空の青さも心地よい。
「だろ?」
さりげなく平子君が自慢してる。
別に平子君の建物じゃないんだけれど
でもその自慢気な顔が可愛らしく感じて笑ってしまう。
すると平子君も笑う。
さっきまでの怖いピリピリした感じじゃなくて
本当に楽しそうに私の顔を見て笑顔を見せた。
あぁ
これが女子に人気の平子スマイルかな?
落ちる気持ちもわかる笑顔。



