「あんな可愛い彼氏がいるなんて悔しいから、イジワル言っちゃった。早く行きなさい!」
楽器置場から追い出され
よくわかんない気分で音楽室を出たら
平子君がそこに立っていた。
「よっ……」
とぼけた感じで私の目の前に立っている。
何に急に?
さっき教室で解散したばかりでしょう。
「どしたの?」
「部活中止だし」
「みんなそうだよ」
「心愛のカバン持ってきた」
平子君は教室に置いてある私のカバンを差し出す。
「……ありがとう」
「カバン忘れて帰ったのかな?って思って」
「音楽室にマウスピース取りに来たの。それから教室に戻ろうと思ってた」
「マウスピースって楽器の鳴らす場所?」
「うん。家で練習できたらする。小さいけど音が大きいから怒られるかな」
誰も家に居なかったらいいな。
心音が居たら『うるさい!』って怒られるから。
私は平子君から自分のカバンを受け取って、マウスピースを丁寧にカバンに入れた。
「屋上行かない?」
「えっ?」
「天気いいから気持ちいいよ」
「いや無理!いいよ」
うちの学校の屋上は三年生が支配している。
それも怖いジャンルの三年生がたむろっていて有名な場所。
チキンな私には縁のない場所。



