杏珠の怒りが伝わってきたから
「いいんだ」って小さく杏珠に言って、実花のバカ笑いが通り過ぎるのを待つ。

実花に絡まれるのは
にわか雨みたいなもの
タイミングが悪いだけ
通り過ぎるから大丈夫。

本当は嫌だけど
もういいんだ

だって私には杏珠がいるから

他の人達に笑われても……って
あれ?今日はなんか
実花のバカ笑いが空回りしてる気がする。

教室が静かだ
いっぱい人がいるのに
誰も何も言わないし笑わない。

実花だけが浮いてる気がする。

静けさを打ち破ったのは
大人しい萌ちゃんだった。
萌ちゃんの細いけど凛とした声が教室に響く。

「実花の方が……ありえない」

実花の後ろからそう言って
実花を叩き落とす。

萌ちゃんがそんな事を言うなんて……。

萌ちゃんは私を見てうなずいた。

やっぱり

仲良しの友達だった

実花に遠慮して
最近はあまり話ができなかったけど
優しくて大人しい萌ちゃんは、やっぱり仲良しの友達だったんだ。

胸の奥がじんわり熱くなる。