一番先に考えたのは
杏珠のお母さんと一緒に
あの男の人が来たらどうしようって考えた。

お父さんは土曜日だけど大切な仕事があって会社に行ったので、お母さんしか頼る人はいない。
お母さんも強いから大丈夫と信じよう。
いざとなったら
私も闘う。

ドキドキしながら玄関に行くと
そこには
スーツ姿の杏珠のお母さんがひとり、スッと姿勢よく玄関で佇んでいた。

綺麗な人。
杏珠が綺麗だから
お母さんも綺麗なんだ。納得。
写真のお姉ちゃんも綺麗だものね。

細くてスラっとしていて
お母さんが大好きなドラマに出てくる、主人公の不倫相手役の人に似ている。
髪をアップにしていて
紺のスーツが良く似合う
これから仕事なのだろう。

パッと目を惹く人だった
やっぱりお父さんが居なくてよかったかも。

「杏珠がお世話になりました。ご迷惑かけて申し訳ありません」
綺麗なお母さんに丁寧に頭を下げられ
うちのお母さんは「いいえとんでもない」と、動揺しながら返事した。
杏珠のお母さんが綺麗で圧倒されてるんだね、わかりやすいなぁ。

「杏珠帰るわよ」
キツい言い方で杏珠にそう言うと、杏珠は「あの男が出て行かないと、私は帰らない!」はっきり大きな声で宣言した。