そう思いながらも
電気を消した部屋で私達の話は続く。

杏珠の家の話は一切せずに
学校の話が多かった。

「心愛は平子君と付き合わないの?」

いきなり杏珠に言われて頬が熱くなる。
部屋が暗くてよかった。

「えっ?なんで?」

「平子君は心愛が好きだから」

「そうじゃないよ」

「そうだよ。見ててわかるもん。平子君はわかりやすいから」

「私みたいなのと付き合ったら、みんなに笑われるよ」

イジイジ心愛。
自分ながら暗い。

「平子君は人気あるもん。男子にも女子にも人気あって、一年生にも大人気で、もしかしたら小倉さんが平子君の事が好きかもしれないし……」

小倉さんはクラスが同じで
最近は実花と仲がいい。
だから
ちょっとやっかいだ。

私が平子君と話をしていると
すごく嫌な顔で自分の席から見てるし
実花がわざとらしくタメ息をして
私の悪口をふざけて言う。

「それに……私は……」

「悠貴が好き?」

杏珠はストレートに聞いてくる。

何日か前なら
杏珠の質問に首を縦にして『うん』って返事したかもしれないけれど、今はなぜか大好きだった中原君が遠く感じる。王子様は王子様なんだけど、本当に遠いずーーーーっとずっと自分から離れたアイドル的な王子様感覚で、身近に感じられない。

そして王子様にはお姫様がお似合いな気がする。
今、映像が目に浮かぶのは
中原君と杏珠のツーショット。

完璧なツーショットの図。