杏珠と中原君は小学校も同じで仲が良く
その日はテスト期間で部活もなく
偶然中原君と帰り道で会い
一緒に歩いてていた。

元気のない杏珠の様子を気にして
中原君は心配してくれた。

中原君は杏珠が好きだから。

きっと杏珠も中原君が好きなんだろう。

杏珠は中原君になら
全て話していいかなと思っていた。

もう杏珠は限界だったから。

どうやって話をしようかと考えながら
ふたりで家の周りを意味もなく
離れたくなくて歩いていたら

お母さんの彼氏に見つかった。

「『うちの娘に手を出すな!』って、いきなり悠貴に飛びかかって悠貴を殴った」

杏珠の告白に声が出ない。

中原君を?殴ったの?

「悠貴はそのはずみで腕をケガして、しばらく大好きなバスケを休んだ。誰にやられたとかは言わず自分で『転んだ』って下手なウソついて……その時思った」

「なんて?」

「もう……誰にも助けを求めないようにしよう……って」

杏珠の目から涙がポロリとこぼれた。
それはとても綺麗な透明な粒で
天使の涙って
こんなんなのかなって変な事を思いながら
苦しくなった。