穏やかな天気なのに、突然、風のカタマリが膨れ上がって、

夕(ユウ)を襲った。

薄い服と、長い髪が、あおられる。

おまけに何かが体に巻き付いてくる感覚。

ナニ、これ。

立ち止まって、それに耐えていると、

急に周りの景色から動きが止まった。

体に巻き付いていた何かが、ゆっくりと質感を持って、

色を持って、

大蛇!?

夕が体をすくめた瞬間、それは体から剥がれて、すうーっと舞い上げる。

見たことはなかったけど、

龍だ。

一目でわかった。

龍は夕を眺めると、

『異世界の危機を救ってくれる気はないか?』

話しかけてきた。

「え?」

目の前の空間が揺れて、そこにぼんやりと人の形が浮かび上がる。

『これが、お前の旅を支えるパートナーだ。好きな姿を選べ』

夕は怪訝な顔で、長い髪をかき上げる。

人型は、すらりとした長身になる。

短髪で眼鏡をかけた美青年。

『僕が、あなたの冒険をサポートいたします』

人型はぼやけて、形を取り直す。