何も言えなくなって、お互い黙り込んだ時。
見計らったように、明るい声が教室に響いた。

「お、お邪魔しまーす……」

突然割り込んできた声に、私も彼女も飛び跳ねるように驚いた。

ぱっと扉のほうを見て、そこにいるはずのない人物にさらに驚く。

「相良君……!?」

「来ちゃった」

語尾に音符が付きそうな、軽やかな声。だけど、少し無理をしている気もする。

にこっと笑う姿が、とても格好いい……というか、可愛い。

「どうしてここに?」

「この前、二人が会いに来てくれたから。今度は俺達が、ね」

「……俺達?」

宮ちゃんが、まさかという表情をしている。私も同じだろう。

ーーそして彼の隣から、教室の扉に手をついて顔を覗かせた。

無表情にも見えるが、どことなく決まりが悪そうに唇を引き結んだ。

「み、美鈴君……」

恐る恐る振り向くと、彼女はギギギと軋むように身体を硬直させていた。

暫く誰もが口を閉ざし、気不味い静寂が続く。

とにかく確認しなくては、という決死の覚悟で、私は尋ねた。

「えっと、二人共来てくれてありがとう。それで、その……いつから」

眉を下げた相良君の表情で、何となく予想はついてしまうけれど。

美鈴君は、扉に寄り掛かったまま。

「……」

(あぁ……目を逸らさないで。宮ちゃんが大変なことに……)

羞恥か、怒りか。

彼女はぷるぷると震えながら、俯いている。

「いつから、いたの」

小さな声だったけれど、静かな教室ではよく聞こえた。

美鈴君は答えないまま。