一日……いや、半日はあっという間に過ぎて、もう放課後。

結局、二人にはお礼も言っていないままだ。

かといって、また普通科の校舎に行くのは足が竦むし、このまま帰る気にもなれない。

クラスメイトがちらほらと教室を出ていくのを、ぼんやりと見送っていた。

「由李、帰らないの?」

「うー、どうしよう」

つい泣き言を漏らすと、彼女はいつも通りの強気な笑みを見せてくれる。

「ちょっと、ゆっくり話そうか」

私の前の席に座って、彼女は少しだけ窓を開けた。

入り込んだ風が、そよそよと彼女の前髪を撫でる。

「由李ったら、授業中ずっと屋上を見てたでしょ」

「そ、そんなことないよ」

彼女には、ばれていたらしい。

にやにやと目を細めている彼女には意味が無いと分かっているけれど、一応否定しておく。

(授業中によそ見なんて、したことなかったのにな)

少しだけ、普通科の人達が楽しそうなのが分かった気になったのは秘密だ。

「そういえば、宮ちゃん。美鈴君とお友達だったの?」

「ごふっ!」

「わぁ!?大丈夫?」

彼女が、大好きな烏龍茶で喉を詰まらせた。

気管に入り込んだみたいで、苦しそうに噎せている。

うっすらと涙目になりながら、どんどんっと胸を叩く彼女の背を優しく叩く。

……そろそろ、治まったかな?

「ごめんね、突然話しかけたから」

「いや、むしろ話題のほうにびっくりしたよ」

じっと見つめていると、彼女は観念したように溜息を吐いた。

「まぁ、その……幼馴染みっていうか」

「幼馴染み?」

「っ、というか、ただの腐れ縁みたいなもの!」

声を荒らげる彼女の表情に、私の予想は確信を得た。

けれど、浮つく私の心とは裏腹。

彼の話になった途端、彼女の瞳には悲しみが滲んだ。

切なげな表情に、何も言えなくなってしまう。