どごっと鈍く重い音がして、男の子は呻きながら崩れ落ち、腕の拘束が解ける。

涙で濡れた視界の向こうには、大好きな人。

(……あぁ、来てくれた)

衝動に駆られるまま、突進するような勢いで、一目散に彼の胸に飛び込んだ。

「相良君……相良君っ!」

大きな彼の背中に腕を回し、ぎゅっと強く彼の上着を握り締めた。

彼はふらつきもせず受け止めて、一度だけ強くぎゅっと抱き締めてくれた。

それはすぐに、綿で包み込むように優しく、壊れ物を扱うかのように繊細なものに変わった。

労わるような力加減がもどかしくて、もっともっとしがみつく。

「無事で良かった……」

彼の荒い息遣いと、どくどくと大きな心音が、怯える私の心をじんわりと溶かしていく。

ぽんぽん、と規則正しく背中を撫でられると、彼の温もりと相俟って、溢れる涙はもう止まらなかった。