「ごめん」

素直に謝った美鈴君に、荒ぶっていた彼女の気は僅かだが落ち着いたらしかった。

けれど、それもつかの間。

美鈴君は「でも」と頭を上げると、彼女を真っ直ぐに射抜いた。

そして、一言。

「お前が、女の子?おもしれぇ」

ーー私の隣で、"ぷちん"と何かが切れる音がした。

彼女はすかさず布団をはね飛ばして、美鈴君に詰め寄った。

「何ですって?」

臨戦態勢に入った彼女を止めるべく、彼女の背を追いかける。

「女なら、女らしくしとけ。ちびのくせに」

「なっ、ちびは関係ないでしょ!」

火に油を注ぐような美鈴君の態度に、彼女はますますいきり立つ。

「み、宮ちゃん……」

手のつけられない二人に、傍観していた相良君はやれやれと肩を竦めた。

「ちょっと、離れとこう」

にっこりと微笑む相良君は、流れるような自然な動作で私の手を取り、ヒートアップする二人から遠ざかる。

「……っと、ごめん!」

「へ?」

突然、相良君は我に返ったように私の手を離し、ばっと左手を上げた。

「ごめん、いきなり……その、」

そして、彼は恥ずかしそうに口元を手で覆った。

行き場のない右手と、初めて見る彼の表情に、何が起こったかをじわじわと理解する。

ぶわっと身体から熱が溢れる。

「う、ううん!」

ーー相良君と、手を繋いだ。

彼の左手が視界に入ると、さらに体温が上昇して、心臓がばくばくと鳴り響く。

胸の前で、彼と繋いだ右手をそっと撫でる。

(……どうしてだろう。相良君は男の子なのに、怖くない)

たった三歩の距離。

ちらっと見上げれば、目が合った彼が照れたように微笑む。

身体の熱が、また上がった。