私の言葉に、思案げに目を伏せた美鈴君の隣で、相良君は何か違和感を感じたように「ん?」と首を傾げた。

彼の動きに合わせて、髪がふわりと揺れる。

何でもない仕草にも、心がどきっと音を立てる。

(今、それどころじゃないんだってば……)

心の中で自分を叱咤しつつ、赤くなったであろう頬に両手を当てて隠した。

「それって」

低く響くような声に、意識が吸い込まれそうになる。

「自分が?相手が、じゃなく?」

こくりと頷くと、相良君は遠い目をして顔を引き攣らせた。

「俺らで止められるの、それ」

首を傾げるのは、今度は私の番だった。

「え?でも、さっき……」

彼女は実際に、誰も傷付けずにいられたわけだ。

気を失った理由こそ、彼女を止めた理由なのだろう。

言いたいことが伝わったのか、相良君は気まずそうに目を逸らした。

それでも、追い討ちをかけるように見つめ続けていると、やがて「降参」というように嘆息する。

「美鈴」

「……あぁ」

二人はそれだけを短く交わすと、私のほうへ向き直り、揃ってぺこーっと頭を下げた。

「先に謝る。悪かった」

「うん、ごめんなさい」

「え、え?」

突然の謝罪にあわあわと戸惑いながら、ともあれ二人に顔を上げてもらうように促した。