「普通科がこっち見ないでくれる? 馬鹿が移る」

「はぁ?自惚れんな。誰も、特進科なんて見てねぇよ」

ーー目が合えば、一触即発。

そんな光景は、「普通科」と「特進科」が顔を合わせれば珍しいことではなく。

「みーずはーらちゃん♪」

「と、通してください……!」

「怖がんないでよ、俺ら優しいよー?」

特進科 水原 由李。

人見知りが災いして、昔から何かと男の子にからかわれやすい。

現在進行形で、普通科の男の子二人組に絶賛絡まれ中。

鞄を両手で抱き締めるように抱えて、そこに顔を埋めるようにして目を逸らした。

……嫌だな、怖い。

けれど、そんなことが日常茶飯事のこの高校では、誰も助けてくれることなんてない。

というより、決着がつくまで手出し無用なのが暗黙の了解なのだそう。

だから、私のような地味な子は、彼らの暇つぶしには恰好の獲物なのだろう。