「駄目っ、宮ちゃん!」

「……あ、由李ーー!?」

咄嗟に、彼女達の間に割り込むように身体を滑り込ませた。

そして、訪れるであろう痛みを予感して、強く強く目を瞑った。

「ーーうっ……」

(……あ、れ?)

待てども痛みは全く無くて、代わりに誰かの呻き声が近くで聞こえた気がした。

「もう、大丈夫だよ」

耳元で、あの低く響くような声が聞こえて、「まさか」と思いながら恐る恐る目を開けた。

顔を庇った腕の隙間から、あの日と同じ、少し悪戯に微笑む笑顔が覗いた。

「さ、相良君……?」

はっと顔を上げると、彼は少し驚いたように目を丸くしてから、にっこりと微笑んだ。

ぶわっと頬に熱がたまる。

彼の端正な顔がすぐ近くにあって、私は心臓が止まるかと思った。

「なっ、何で相良が……」

女の子達の、悲鳴じみた声。

私同様、彼の登場に驚きを隠せないのだろう。

「お前ら……何してんの?」

いつもより数段低い彼の声が、真っ直ぐに女の子達を射抜いていた。

背に庇われて、彼の表情は見えない。

「べ、別に……もう行こ!」

女の子達は彼に怯えるように顔を青ざめさせて、悔しそうにぱたぱたと走り去った。