睨み合う彼女達に近付くにつれ、言い争う声が聞こえる。

「……自分が男子にちやほやされないからって、この子に八つ当たりするのはやめてくれない?」

臆することなく堂々とそう言い返したのは、彼女といつも一緒にいる友達の女の子。

気の強そうな印象はあったけれど、中々言うじゃありませんか。

俺達がわざわざ来なくても良かったかな、と苦笑してしまう。

「短絡的な性格ブスは引っ込めって言ってるの。勉強も出来ない馬鹿には分かんないかなぁ?」

その台詞には、思わず吹き出しそうになった。

「っ、ガリ勉が調子乗んな!」

「ふふっ、あなたの事を言ったつもりじゃなかったのに!そんなに怒るなんて……心当たりでもあった?」

(いやー……今のは確実に本人に言ってたでしょ)

敢えて相手を苛立たせるような言い方に、普通科の女子達の顔が引き攣る。

そして、女子達は煽られたことで火がついたのか、一人が大きく手を振り被った。

「生意気なんだよっ!」

女の子は愉しそうに口元を歪めて、勢いよく飛び出した。

「くそ……っ!」

「は……美鈴!?」

女の子は真っ向から、女子の平手打ちを受け止めた。それでも、勢いは止まらない。

「ーー駄目っ、宮ちゃん!」

あの子が、彼女達の間に割り込むように身体を滑り込ませた姿が、スローモーションのようにゆっくりに見えた。

ーー危ない。

そう認識した時にはすでに、俺の身体は動き出していた。