「ねぇ、見てよあれ。勉強しか出来ない特進科さんじゃん?あんな地面に座り込んじゃって、汚ぁい」

「か弱いアピールして、男子にちやほやされたいんでしょ。ほら、特進科って男子少ないからぁ、飢えてるんじゃない?」

「きゃはは、言えてるー!」

散々な言われようだ。そんな風に思われていたのか。

くるくると巻いた茶髪を背中に送って、女の子はきっと私を睨みつけた。

「あんたみたいな特進科の地味子が、相良に相手してもらえるとでも思ってんの?身の程知らず」

ーー聞かれてたんだ。

途端に、かぁっと顔が熱くなる。

女の子から敵意のようなものを感じて、恐怖で足が竦んでしまう。

何も言い返せなくて俯くと、私を庇うように彼女が立ち上がった。

「何よ、あなた達」

「やだ怖ーい、ガリ勉が怒ったぁ」

女の子達は意に介さないように笑い続け、「怖い怖いー」と繰り返す。

そんな女の子達を捉える彼女の瞳に、だんだん冷たさが滲んでいく。

「自分達が男子にちやほやされないからって、この子に八つ当たりするのは止めてくれない?」

堂々と腕を組んで、彼女は貶むような微笑を浮かべて女の子を見上げた。

「はぁ!?」

「あーあ。短絡的な性格ブスは引っ込んでて欲しい……勉強も出来ない馬鹿には、分かんないのかな?」

「っ、ガリ勉が調子乗んな!」

「あれー?あなた達の事を言ったつもりじゃなかったのに!勘違いさせちゃって、ごめんね?でも、そんなに怒るなんて……心当たりでもあった?」

彼女の、敢えて相手を苛立たせるような言い方にはらはらする。

怒りか羞恥か、顔を真っ赤にした女の子が手を大きく振りかぶった。

「生意気なんだよっ!」

彼女の手に、ぎゅっと力がこもる。

愉しそうに口元を歪めた彼女が、ゆらりと身を屈めてーー

「あぁ駄目っ、宮ちゃん!」

引き止める私の手をするりと解いて、彼女は女の子達に殴り掛かろうと勢いよく飛び出した。

女の子の平手打ちを真っ向から受けても一切怯まず、力いっぱい握りしめられた彼女の拳は止まらない。

(間に合って……!)

咄嗟に、彼女達の間に割り込むように身体を滑り込ませた。

そして、訪れるであろう痛みを予感して、強く強く目を瞑った。