君は太陽

「静也について行くって選択肢もあったわけじゃん? だけど、それを選ばなかった。なんでだろってずっと思ってたんだよ」

「なんでって……」

「だってさ、お前、言わないけど静也のこと大好きじゃん。それに、ひとりでも大丈夫ですみたいな顔してるけど、意外と寂しがりだし」

ふたりきりの空間に、静寂が広がる。

静寂を破ったのは、私だった。

「迷惑かけたくなかったの」

普段の私なら、清志なんかに弱音を吐くことはないのに、今夜は酔っぱらっているせいもあってか、スラスラと本音がこぼれてきた。

「本音を言うならね、別にロンドンまで行かなくても研究は出来るんじゃないかって思ってたよ。日本で、私の近くですればいいじゃんって。でもさ、私、自分の好きなことに一生懸命な静也のこと、好きだから、言えなかった」

「迷惑かけたくないっていうのは?」

「私が一緒に行ったら、静也に気を遣わせてしまうでしょ? 余計なこと考えずに、研究だけできる環境にいてほしかったから、私は一緒に行かなかったの」

「瑞穂。それ、静也に言ったか?」

私は黙って首を横に振る。

「言ったら多分、静也は気にする。それをわかってたから、強がって送り出した。メールの返事がほとんど来なくても、日本に帰って来なくても、寂しいとか言えなかった。だからって、私が押し掛けるのも迷惑かけると思って出来なかった……」

泣きそうになる顔を清志に見せたくなくて、そのままテーブルに顔を預けていると、不意に頭の上にポン、と重さがかかった。

「遅ぇよ、静也」

「ごめんごめん。清志にもなつみちゃんにも迷惑かけたね」

「静也……?」

そっと顔を上げると、そこには会いたくてたまらない人の顔があった。

どこまで私は弱っているんだろう。

ここまで自分に都合のいい夢を見るなんて。

「ま、夢の中に出てきてくれただけでもありがたいか……」

「え? 瑞穂?」

「ちょっと先輩? あ。寝ちゃってる」

清志となっちゃんの声を遠くに聞きながら、私は深い眠りについた。






翌朝、目を覚ました私の視界には、いつも見ている風景が広がっていた。

「あれ? 昨日私、清志の家で飲んでいたはずなのに……」