君は太陽

「そうね。どうせお菓子もほとんどなくなってるし、三十分くらい早まっても大丈夫よね」

テキパキと閉店作業を進めるふたりを前に私は断ることが出来なくて、ふたりの家へとお邪魔することになったのだった。






「でね、私が結婚してるって言ったら、みんな目を丸くさせるのよ。信じられる!?」

「……今のお前の姿を見てたら信じられねぇよ……」

「え? 清志、なんか言った?」

「連れて帰ってきたのが間違いだった……」

うなだれる清志の背中をバンバンと叩くと、清志の口から小さなうめき声が聞こえた。

そんな清志には目もくれず、私は手にしたグラスの中にある液体を体に流し込む。

「瑞穂先輩ったら、飲みすぎですよ?」

「えー。なっちゃんまで私の味方してくれないの?」

「そんなことありません。私はいつでも先輩の味方です。でも、今日はちょっと飲みすぎかな」

ニコニコと微笑みながら、なっちゃんは私のグラスを取り上げる。

「はい。ちょっと休憩。少しお水飲みましょう」

「ヤダ。ワインがいい」

「もー。子どもみたいに駄々こねないでくださいよ」

清志となっちゃんの家に上がり込んで数時間。

私はすっかり出来上がってしまって、ただの酔っぱらいと化していた。

自分でも飲みすぎた自覚はある。

でも、なんだか今日は飲まないとやってられない気分だったのだ。

「はあ……」

なっちゃんからもらったお水を口に入れて、深いため息をつく。

遠くで呼び鈴の鳴る音が聞こえてきて、なっちゃんが腰を上げた。

なっちゃんの背中を見送りながらつぶやいた一言に、清志が首を傾げる。

「いいなあ、清志となっちゃんは」

「どうしたんだよ、急に」

「だって、いっつも一緒じゃん」

「まあ、店も一緒にやってるしな」

「それに比べて私なんて。三年も会ってないんだよ。あり得ない」

ムスッと頬を膨らませてテーブルに突っ伏す私に、清志が間延びした声で話しかけてきた。

「瑞穂。俺、聞きたかったんだけど」

「何?」

「お前さ、五年前、なんでこっちに残ったんだ?」

「え?」