「逢沢さんのことは、ホント偶然だよ。でも、逢沢さんに会えなかったら、ここまで来られてなかっただろうなあ」

私の横に腰を下ろしながら、松嶋くんが笑う。

「ごめんね。今朝アメリカから帰ってきたばかりなのに、全然休めてないよね」

「結衣が見つかったから、平気だよ」

にこやかに笑う松嶋くんに対して、どんどんと罪悪感が生まれてきてしまう。

私がこんなわがままな行動を起こさなければ、松嶋くんは、今頃ゆっくりと自分の部屋で体を休めていたに違いない。

こうやって笑っているけど、きっと疲れているはずなのに。

しょんぼりと肩を落としていると、頭の上にポン、と松嶋くんの手が置かれた。

「また勝手に反省会してるんだろ? 俺のことは気にしなくてもいいから」

「でも……」

「何はともあれ、結衣を見つけることができたし、誤解も解けた。誤解されたままで結衣に会えないままのほうが、疲れがとれないよ」

「……うん」

頭の上に置かれた松嶋くんの手は、私の存在を確認するかのようにゆっくりと頭上で動いていた。

一定のリズムでフワフワと頭を撫でられていると、松嶋くんに自分の気持ちを素直にぶつけたいと思うようになってくる。

今なら、ちゃんと言えるだろうか。

緊張で震えそうになる手をギュッと握りしめ、私が言葉を発したのと、松嶋くんが話しかけたのはほぼ同時だった。

「あのさ、結衣……」

「蒼大くん、大好き」

思わずお互いが固まってしまい、見つめ合う。

「結衣、今、何て……」

「ずっと、素直に自分の気持ちを伝えたら、離れるときに辛いと思って言えなかったの。松嶋くんのことも、名前で呼びたかったし、ちゃんと好きって言いたかったの……」

「このタイミングとか、無自覚ならかなりヤバイよ」

「ごめん。いけなかった?」

「逆だよ。逆っ!」

そう言って、松嶋くんが私をギュッと抱きしめる。

顔は私の背中側にあるので表情は見えないけれど、横に見える耳が真っ赤に染まっていた。

「俺も、自分の言いたいこと言おうと思って、さっき結衣に、名前で呼んでほしいって言おうと思ってたんだ