「えー。でも、結衣のペースに合わせてたら、ふたりともおじいちゃんとおばあちゃんになっちゃうよ」

「……そこまではさすがにないでしょ。ね、結衣ちゃん」

「う、うん。っていうか、松嶋くんもそこまで気は長くないと思うけど」

「いやあ、わかんないよ? 松嶋くんの結衣を想う気持ちはかなりのものだもん」

ピシッ、と人差し指を突き立ててうなずくきょんちゃんは、さながら探偵さんのようだ。

「確かに。きょんちゃんが結衣ちゃんを合コンに誘ったとき、必死で止めてたときの焦りようみてたらね。でも、その前から結衣ちゃんのことが大好きオーラ、すごかったもんねぇ」

「そうそう。いーっつも結衣のこと見てるし、気にしてたもんね」

「そうだったの……?」

「え? むしろ私は結衣に問いたい。あれだけアピールされてて本当に気づいてなかったの?」

間髪入れずに私は首を縦に振る。

だって、私が見ている松嶋くんは、いつだって誰にだって優しいから。

私だけが特別にされているなんて、思ったことなんてなかった。

だけど……。

「告白されてからは、ふたりが言うように、私のこと大事に想ってくれてるのかなって感じることがあるよ」

例えば、ご飯に行ったとき。私の好きな食べ物は最初に頼んでくれるし、反対に嫌いな食べ物は注文しない。

アルコールの飲むペースや限度量も把握していて、さりげなく私が酔わないように確認してくれる。

出掛ける時も、私が興味を示しそうなモノがあるところをチョイスしてくれる。

私の気持ちに先回りして、行動してくれる。

そんなの、私をずっと見てくれていないときっとわからない。

だからこそ、思う。松嶋くんは、私のことをずっと見ていてくれたのだなと。

「だったら、結衣。そろそろきちんと返事をしてあげるべきじゃない?」

いつになく真面目な口調のきょんちゃんにつられて、私も思わず表情が硬くなる。

「松嶋くんは、結衣に対して本当に誠実だよ。それは結衣だってわかるでしょ?」

「うん」

「もし、結衣ちゃんが何か不安なことがあって付き合うの躊躇してるんだったら、松嶋くんとちゃんと話してみたら?」

「小春の言うとおりだよ。松嶋くんがちゃんと受け止めてくれる人だっていうことは、私たち以上に結衣がわかってるよね」

私は大きくうなずく。

「ありがとう。きょんちゃん、小春ちゃん。ちゃんと松嶋くんと向き合って話してみる」

私の言葉に、ふたりの顔に笑顔が広がった。