「三枝はどういうときにそこに?」

「んー、なんかのんびりしたいときとかかな。嫌なこととかあっても、気持ちがあったまっていって、頑張ろうって思えるの」

「……もし三枝さえよかったらさ。今度、連れて行ってよ」

その言葉に、少しためらったけど。

「うん」

なぜだか私は、そう素直に口に出していた。






「松嶋くん、ここでいいよ」

「いいって。家の前まで送るよ」

「この道まっすぐ行ったすぐそこだし、道狭いから大丈夫」

美味しいランチを食べた後、車で来ているという松嶋くんに、私は家の近くまで送ってもらっていた。

松嶋くんの帰る方向は逆方向だから、私は断ったんだけど、松嶋くんは聞き入れてくれなかったのだ。

今も、「ここでいい」と言う私に対して不満そうな表情を浮かべている。

「本当に大丈夫だから」

言い聞かすように伝えると、渋々と言った感じで松嶋くんはうなずいた。

「今日はありがとう。じゃあ、また月曜日にね」

シートベルトを外し、助手席のドアに手を掛けた瞬間、右腕を松嶋くんに掴まれていた。

「どうしたの?」

「三枝。ちょっとだけ、時間いいかな?」

私が小さくうなずくと、松嶋くんは大きく息を吐いた。

そして、私の目を真っ直ぐに見つめる。

「俺と、付き合ってくれませんか?」

「……え?」

松嶋くんからの突然の告白。

びっくりして言葉の出ない私から、目を逸らすことなく、松嶋くんは言葉を続ける。

「初めて会ったときから、三枝のこと気になってた。今、三枝が恋愛にあんまり興味がないことも、同期会とかで話してて知ってるけど、それでも俺は、三枝のことが好きで、付き合いたいって思ってる」

どうしよう。真剣な表情の松嶋くんを見ていると、適当にごまかして断ることなんて出来ない気がしてくる。

いつもなら、告白されても「そんな気はない」って断っていたのに、今回は簡単にその言葉が出てこない。

変わりに、いつもと違って心臓がドキドキとうるさい。