ガララッ


「じゅーん!!教科書貸してーー!」










朝一番。

帝くんへの挨拶に一杯一杯になっている私をよそに
勢いよく教室のドアを開けながら呑気に呼びかける金髪。




「……またか」


思わず溜息が漏れる。




こいつは佐野 春綺(サノ ハルキ)。

小学校からの幼馴染である春綺とは
クラスは違うが、こうやってお互いの教室に行き来したり一緒に帰ったりもする。



そして朝や休み時間に教科書を貸りにくるのは
もはや日課だ。





「お前って馬鹿だけど教科書だけはちゃんと持ってきてるからな~」

私の呆れた表情にはお構いなしに
空いていた前の席へ無断で腰掛け、無礼極まりない振る舞い。




「貸すのやめた」



「ごめんごめん、お願い潤ちゃん。
教科書返し忘れても大丈夫な奴ってお前しか居ないのよ」

「どういう意味だ」


「出さない、使わない、気づかない」













「おい」





悲しいことに教室中がウケた。