キーンコーンカーンコーン

もう昼休みです。

隣で瀬戸口くんは寝ています。

起こした方がいいのでしょうか!?

いや起こさないとだよね...!!

「せ...瀬戸口くんっおきて!!」

「ん...」

寝顔をこっちに向けた瀬戸口くん。

ドキッ
まつげ長いなぁ〜...。

「...見すぎ」

「わぁ!!お、おきてたの...?」

「今起きた」

そう言って椅子から立ち上がると「行くぞ」と言ってお弁当をもつ私の腕を引っ張って歩き始めた。

「あの...!!」

「ゆずー!!ってえ!?」

「ごめん一緒に食べれない...!!」

瀬戸口くんは速くて引っ張られるがまま教室を出て廊下を歩き始める。

周りの目がすごくて...。

「なになに!?」

そんな声を無視して進んだ先は階段。

「ここって...」

屋上に向かってる?

「だ、だめだよ!!
屋上は入っちゃいけないって...」

「俺の兄貴がここで先生やってるから許可はもらってる」

「えぇ!!す、すごいね...」

驚く私を気にすることもなく屋上を開けて入っていってしまった。

続けて私も入る。

「わぁ...!!」

そこに見えたのはピンクの花や白い花を咲かせている並木。

木の間には1つずつベンチがある。

ここほんとに屋上...?

疑ってしまう程きれいな風景。

「桜...?」

「これは桜じゃなくてハナミヅキ。
ここきれいだろ?
俺の特等席だったけど桜庭にも許可する」

そう言って笑う瀬戸口くん。

「あ、りがとう...」

照れて言葉がかたことになってしまった。

さっそく真ん中らへんのベンチに座ってみる。

いいなぁここ。落ち着くなぁ...。

そう思っていると瀬戸口くんは隣に座った。

「そろそろ食べるか」

「そうだね!!」

朝は上手くできたって自信満々だったけどやっぱり緊張する。

瀬戸口くんはわざと大きいお弁当箱にしたんだ。

男の子はいっぱい食べるかなって思って...。

「いただきます」

そう言ってお弁当を開けた瀬戸口くん。

今回のメインはハンバーグ。

他は卵焼き、スパゲッティ、サラダ、ミニトマト...などなど。

ご飯は海苔やふりかけでねずみをつくった。

最近は冷凍食品で全部買えるけど私は最後まで自分で作った。

瀬戸口くんは開けてからじーっと見てふっと笑った。

「?」

「いやこのねずみさ、俺が前言ったからかな?って思って」

「そうだよ」

そう言って私も笑った。

瀬戸口くんは単純だなって言いながらハンバーグに手をつけた。

器用に切って口に運ぶ。

「...どうかな?」

「...」

「え、ご、ごめんおいしくなかったら「うま。
こんな美味いの久しぶりに食べたかも」

そう言って驚いているようだった。

「大袈裟だよ〜」

「いやほんと。桜庭ほんと料理上手いんだな」

瀬戸口くんはきっと嘘をつかない。

「ありがとう」

嬉しくて恥ずかしくなっちゃったから少しうつむいてそう言った。

夢が叶ったよ。瀬戸口くんのおかげで。

お母さん、お父さん

私は今すごい幸せです。