ピピピッピピピッ

「ん...?」

私は鬱陶しいほど高い機械音で目が覚めた。

時計が指すのは8の位置。

「え...うそ...」

目覚まし時計を止めて急いで起きる。

今日は高校の入学式だ。

「どうしよう...」

「ゆずー!!」

元気な明るい声が外から聞こえる。

「花恋...」

私は窓から顔を出した。

「え!?もしかして今起きたの!?」

「そ、そうなの...」

「もーばかー!!ほら、玄関開けて!!」

「うん...」

重い体を持ち上げて私はベッドから出た。

急ごうと思って少し小走りをした。

階段を降りるとドアの向こうにいつものシルエットが見えた。

ガチャッ

「ゆず!?ほんとにばか!!」

「ごめん...!!」

花恋は靴を脱ぎすごい勢いで中に入ってきた。

「朝ごはんはいいよね!?
今日髪やったあげるから!!
早く着替えて顔洗って!!」

「ふふ」

花恋お母さんみたい。

「ほら早く!!」

「はいはーい」

この明るい子は花恋。私の幼馴染。

私は6歳の時に交通事故で両親をなくした。

唯一の親戚だったおばの家に住んでたけど半年前おばが亡くなった。

そこからは一人暮らしをしてる。

花恋は小さい頃から私が寂しい時にいつもそばにいてくれた。

両親をなくして泣きわめいている私に何度も「大丈夫だよ、花恋がいるよ」って言って一緒に泣いてくれたのを覚えている。

花恋がいなかったらきっとここまで立ち直れていないと思う。

本当に感謝してる。

なんて考えてるうちに制服を着終わった。

「わぁ...!!」

青いチェックのスカートに同じ柄のリボン、水色のワイシャツに紺のブレザー。

自分で言うのもあれだけど、結構似合っていると思う。

制服を着て高校への期待がもっと強くなった。

「ゆずー!!下降りてきて!!」

「はい...!!」

そうだ...時間ないんだった...。

靴下を履き、下に降りていく。

リビングに入ると花恋がヘアアレンジをする準備をしていた。

「おーゆず!!制服似合ってる!!」

「ほんと!!よかったぁ」

「髪どういう風にしよっか...」

「おまかせで...っ」

髪は自分でできないからどんなのがいいのか分からない。

「おけおけ」

そこから5分ほどの短い時間でもう完成した。

編み込みカチューシャで下の髪の毛は巻いたみたい。

「いい感じ!!可愛いー!!
あとはグロスかな」

「私がそんなのつけて似合う...?」

「ゆずは可愛いんだからもっと自信をもって!!」

「えぇ...可愛くないよ...」

無理やりグロスをつけられた。

初めてのグロスで全然慣れない。

なんでつけなきゃいけないんだろ。

心の中を見られたみたいに花恋は「恋愛しなきゃだもんね」と笑って言った。

「出来るわけないよ...」

そう。出来るわけない。

恋愛感情が分からなくて、恋愛しない歴=年齢になってる。

恋愛って楽しいのとか聞くと、皆辛い時もあるって言う。

何で辛い思いをしようとするのか分からなかった。

「コンタクトにしたもんねぇ。
ゆず高校になってもっと可愛くなったしすごいモテモテになっちゃったりして」

「いやいや!!
私なんかがモテるわけないよ」

私は笑って言った。

この時はそう思ってた。

まさかあんなことになるなんて...__

「よし...じゃあいこ!!」

花恋は扉を開けて微笑んだ。

「うん!!」