「栞里ちゃん、電子辞書持ってたりしない?」
「え?」
廊下に出た私に、慎くんはそんな事を尋ねてきた。
なんでも、午後の英語の授業で使うのに忘れてしまったらしくて。
「うん、いいよ。ちょっと待っててね」
「わーい、やった!」
ブンブンと振る尻尾が見える従兄弟にクスッと笑いながら、私は自分の机の中を漁った。
「はい、お待たせ………って、和泉くん?」
電子辞書を持って再び廊下に出ると、そこには何故か和泉くんの姿。
そういえばさっきまで席にいなかったような…。
そんな事を思いながらも、何となく慎くんと和泉くんの間に漂う異様な空気を感じ取る。
チラリと慎くんへ目を向けて、思わず息を飲んだ。



