「ねぇ、花宮さん」

「…っ」

「……栞里、こっち向いて」



しんと静まり返る部屋の中で、そんなことすら気にもしてないかのように和泉くんの声だけが響いてきた。



「何、俺の大事な人知ってるわけ?」

「……ずるい」

「は?」

「和泉くんずるい…!」



自分でも、いきなり何を言い出すのかと思う。


けど、大事な子がいるくせにそんな呼ばれ方されちゃ、好きを辞めるのも辞められない。


………本当は、辞めるつもりなんて一切ないけれど。




「和泉くんの考えてること、私全然わかんないよ…っ!好きな子いるくせに、からかったりしないで!」


あぁ、ダメだ、止まらない。


熱なんて、とっくに治ってるはずなのに。