「マスクしてるっていっても、軽く咳が出るくらいだし?それにさっきも言ったけど、これは傘を持ってなかった私のミスだから。和泉くんは何も悪くないよ」
……久野さんのことだって、私が「送る」って言ってくれた和泉くんに甘えて、それから勝手に落ち込んだだけの話。
………そういう、ことにしたい。させて欲しい。
これ以上話を広げられるのも、逆に辛い。
「はい、この話はおしまい!もうチャイム鳴っちゃう!和泉くん、席戻ろ?」
「……あぁ」
和泉くんの背中を押して、自分たちの窓側の席に戻る。
その前に、ちゃんと早苗に改めて「ありがとう」と言っておいた。
不服そうな彼女の表情には、気づかないふりをして。



