コツコツコツ…………………


靴音が鳴り響く。

2階から3階に上がる階段を登っている最中、少し疑問に思ったことがあった。

リノン「そういえばこの手紙には『他のお客様』って書いてたよね…?私達もしかしてもてなされてる…?」

シノ「いや、ただ俺達の困ってる顔を見て楽しんでるだけじゃないのか……」

シノは真顔で呟いた。

リノン(で、デスヨネーーー。)










リノン「3階に着いた…」

リノンは少し疲れているようだ。

3階の長い廊下を歩いていく。

301号室を過ぎて302号室の扉の前に着いた。

コンコン…
リノンが扉をノックした。

だが、返事はない。

リノン「すみませーん!いませんかー?」

ガチャッ

シノ「おいリノン…ここのドア、開いてるぞ…」

リノン「ウソ…どんだけ無防備なのかしら。」

2人は部屋の中に入る。進んでいくとベッドルームのような場所に来た。そこで2人は驚きのあまりしばらく固まってしまった。

そこには中学生ぐらいの女の子がベッドの上で無防備に倒れていた。紺色のセーラー服を身にまとっていたが、そのスカートが大きく開いていて女子高生のリノンでも少しドキッとしてしまった。
だがシノは真顔で見つめるだけで何かを言うわけでもなかった。

リノン「ちょっ、シノっ!女子中学生が無防備にしてる所をあんまり見つめちゃだめっ」

リノンは女の子のスカートを綺麗になおして声をかける。

リノン「お、おーい、大丈夫ですか…?」

すると女の子が「ん…」と言いながら目をゆっくりと開けた。そして目を擦りながらリノンとシノを交互に見る。

女の子「……………はっ!!!!!!」

女の子は部屋の端に走っていった。
カーテンの後ろに隠れてゆっくりこちらを見る。

リノン「驚かせてごめんなさい!手紙にこの部屋にいる人を迎えに行ってほしいって書いてたから…」

女の子「へっ…?え?え?ここはどこなんですか??私学校から帰る途中だったんですけど…?」

リノン「…あなたも気づいたらここにいた、って感じ…?」

女の子「えっ、あなたも…ってことは…」

女の子は目を見開いた。

リノン「私も学校から帰ってたはずなのに気づいたらって感じ。私なんか森の中で目が覚めたんだよ?!」

女の子「そ、そうなんですか…あ、自己紹介します。私はモモ。14歳、中学生2年生です。みなさんのお名前は…」

2人のやりとりをしばらく黙って見ていたシノが口を開いた。

シノ「自分から先に名前を言うなんて偉いな。どこかの失礼な女子高生とは大違いだ。」

リノン「なっ……!それ私のことだよね。。その節は申し訳ありませんでしたー!」

リノンの言葉を無視してシノが自己紹介をする。

シノ「俺はシノ。歳は19で学校は行ってない。よろしく…。」

モモ「よ、よろしくお願いします!」
モモは頭を深く下げた。

その様子を見たシノがリノンをバカにしたような笑みを浮かべて言う

シノ「はっ…リノンより全然しっかりしているな。お前も見習った方がいいぞ。」

リノン「ムッキーッ!!!初めて笑ったと思ったら私をバカにして……!」

モモはオドオドしながらこの不穏な空気を変えようとしている。

モモ「あっ、私5人兄弟の1番上なのでちゃんとしなくちゃって思ってるだけなので…!もうすぐ6人兄弟になるんですけどねっ。」

リノン「6人?!お母さん頑張るわね…」

モモはそれを聞いて少し元気を無くしたように呟いた。

モモ「だから早く家に帰りたいんですけどね…お母さん、結構高齢で出産するので私が少しでも楽させてあげたいんです。」

リノンは地雷を踏んだようだ。

リノン「でも、偉いね…お母さんのために早く帰りたいなんて…」

モモ「うちのお母さん、若い時に妊娠しにくい人だったみたいで男の子の養子を貰ったらしいですよ。」

リノン「えっ!じゃあ7人……」

その言葉を遮るようにモモが

モモ「行方不明、なんです…私が生まれる直前に行方不明になったんです。」

リノン「ご、ごめんなさい…」

モモ「いっ、いいえ!全然大丈夫です!さあ、長話する前にここから出ましょう!」

シノ「いや、まだこの建物には俺達みたいな目に遭った人が多分いるんだ。その人達を先に迎えに行こう。」

シノが廊下へ出ていった。

モモ「まだいるんですね…他のみなさんは大丈夫でしょうか?早く迎えに行ってあげないとですね!」




そうして3人は302号室を後にした。