少女「…だいぶ歩いたな…」

少女は少し息を乱しながらひたすら歩き続ける。建物はまだ見えない。見えるのは見渡す限り木々ばかり。人の気配も全く感じない。だんだん少女は不安でいっぱいになった。あまりの不安で涙が出そうになったいた。






すると……………




10mぐらい先の方で風に揺れる人影が見えた。





少女(……………!!!誰かいる!)

少女は夢中で走り出した。今まで生きてきた中で1番頑張って走っただろうという程に。

少女「ハァ、ハァ……」

少女は息をきらして人影の元に走り寄った。そこにはグレーの瞳が日差しにあたって綺麗に輝いている少女より少し年上ぐらいの青年が木にもたれかかっていた。青年は少女が持っていた封筒と同じものを持っていて、それを眺めていた。

青年は少女に気づいてゆっくりとその瞳を上げた。マスクをしていて顔はよく見えないが、整った顔立ちをしている。

少女は少しドキッとした。そして我に返って青年に話しかける。

少女「あ、あなたは誰…?!どこから来たんですか…?わ、私気づいたらここにいたんですけど…」

青年はしばらく黙っていたが、表情を変えないまま口を開いた。

青年「…まずはそっちから名乗ってほしいな。それが常識ってものだろう?」

少女ははっとして名前を名乗った。

リノン「ご、ごめんなさい。私はリノン。16歳ですっ…」

青年「…………………」

リノン「あっ、あの、あなたの名前は…」

シノ「俺はシノ。年齢は…19。お前と俺は多分同じ境遇にある。だから名前を名乗った。」

シノの表情は全く変わらない。だが、リノンはなにか不思議な印象を受けた。

___この人、なんか声が落ち着くし、懐かしい匂い____頭が…ふわふわする……


シノ「…っ、お、おい!大丈夫か…?」

リノンはいつの間にかふらついて地面にうつ伏せていた。

この時、シノは始めて表情を変えた。
少しだけ、驚いて目を見開いていた。

リノン「ご、ごめんなさい…!だ、大丈夫です…」

シノはほっとした表情になった気がした。そしてリノンの肩を支えて、話しかけた。

シノ「さっきも言ったが、俺とお前は同じ境遇の人間だ。お前も地図を貰ったんだろう。良かったらそこまで連れて行こう。…お前の体調も心配だ。」

リノン「ありがとうございます…、すみません…」

シノ「敬語じゃなくていい。シノと呼んでくれ。」

リノン「あ、…ありがとう、シノ。私も気軽にリノンって呼んで。」

シノ「あぁ。しばらくの間よろしく、リノン。」





そして2人は地図に書かれている館に向かって歩き出した。