「楓!!!そろそろ起きなさい!!!
休みだからってねぇ。もう1時よ!!!」
お母さんが私の部屋に向かいながら叫ぶ。

お母さん。
起きてるよ。てか、昨日から寝てない。
ううん、寝れなかったんだ。

黒沢君の
耳元で聞こえた声を
体温を思い出してしまって–––––––––

それプラス、〝好き〟って事まで気づいて。

「わあぁぁぁあああ」
はっずかしい…。
部屋で無駄に動き回る。

「なんだ、起きてたの」
お母さんは私の言動の理由に、なにもふれてこない。
ふれてこなくていいんだけど…、

「お母さん、そろそろ仕事に行くからね。
あ、朝ごはんは用意してるわ。食べ終わったら、買い物行ってきて!」

私に無理やり買うものがかかれたメモを渡し、そそくさとお母さんは私の部屋から出て行った。

しばらくし、玄関のドアが閉まる音も聞こえた。

朝ごはんを食べ、
歯を磨いて 服を着る。
髪を整えて、買い物バックを持った。

「お母さんってほんっと人使いあらいんだから」
独り言を吐き捨て、私は買い物へ向かった。



(ええっ。ここ遠いじゃん。)
メモを見ながらため息をつく。
普段行かないような場所にあるスーパーだ。

(あの道通らなきゃいけないのか…)
あの道、とは墓地の前の一直線の道のこと。
たくさんのお墓があり、周りが明るくても少し気味が悪く見える。

まぁ、見なければ、なにもない。
急いで通っちゃおう…
と考えながら、
私は一直線の道を歩き始めた。

でも、やっぱり私の視線は墓地の方へ。

ん?あそこに誰かいる…?
少し奥の方の、お墓の前で手を合わせている男の子がいた。

あれはまさか–––––––––––––

その〝まさか〟で、黒沢君だった。

私は慌てて電柱の陰に隠れる。

こんなところでなにしてるのかな…
いや、それはお墓参りだろう。けど誰の?

私は黒沢君の背中を見つめる。

その背中は… 姿は。

私の胸を締め付けるほど

いままでにないぐらい…

悲しげに見えたんだ–––––––––––。