少年が次に目覚めたのは武骨な、やはり枷が付属している椅子だった。そしてやはり体の各部を押さえつけられていた。
「……ぅ、ぅうん……。」
少年はうつむきがちに重そうな瞼を細く開くとその隙間から辺りを見回す。
ピッピッピッ……
無機質な機械音が薄ぼんやりとした部屋に響いていた。そこまでは同じなのだ、そこまでは。
鼻を燻る嗅ぎ馴れた薫り、錆びた鉄のような鼻を刺すような異臭。研究員たちがいない、視察に来たお偉い様方もいない。
「……人が、いない……?血、の匂い……?」
思わず目を見開いて顔をあげた。
何も無かった、否、人がいなかった。
否、人は、いるのだ、人だったものは。
あちこちに赤黒い肉片が散らばっていて、臓物がごろごろ溢れている。もちろん辺り一帯は血に染まっていて赤い絨毯が敷かれているようだった。
ふと、自らを見てみると、着せられていたボロボロの服が、血塗れになっていた。腹部に何か鋭利な物で切り裂かれた痕がある。
「俺、一回殺されたのか……」
ふぅ、と、少年の吐息が漏れでる。がちゃがちゃと拘束具が鳴る。少年が手足をばたつかせているのだ。
「あ゛ー。外れねー!!」
ガッチャンガッチャンガタガタ、ガッタンガッタン「これが外れたら久々に自由なんだよ……っ!」
ガッタン、ガチガチ、ガチャガチャ、ボンッッッ
ボンッッッ?
バンッバンッドバンッ。

「ねぇ、何で死んでないの?」

金属製の扉が蹴破られ、扉が倒れる、そこに現れたのは、そこに現れたのは、

少女、だった。少女だったのだ。

淡い紅色の髪をはためかせ、金色の瞳を爛々と輝かせているその少女の手は赤い何かの液体が滴っていた。

「お前は、誰だ?」

それがこいつと出会った瞬間だった。
この出会いがこの少年の、いや、世界の運命を変えることになると、誰も、誰も、知らなかった。