「あ、ありがと…」
今までほとんど無表情だった顔が安堵したようにふっと緩まる。
ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。
絵の具が広がってくみたいに私の中でなにかが広がる。
なに、、これ、?
知ってる、この表情。
知ってるはずなのに、頼りなく彼を見つめる。
私の視線に気がついたのか、また無表情に戻り私を立たせてくれる。
「相変わらず…ドジだな」
「っ、!」
彼は私のことを知ってるの?
お願いだから、、出てこないで。
不規則に鳴り続ける心臓が怖くて、ぎゅっと胸元を握る。
「夜桜く、」
「星夜でいい」
「え?」
「嫌いなんだよ、この名字」
「そっか、星夜くん行こう?」
星夜くんは頷くと、私の1、2歩先を歩く。
良かった、これで私の顔は彼から見えない。
こんなぼろぼろな顔、見せるわけにはいかない。

