「なんだ、よかった…」
自然と顔が緩む。
夜桜くんも私につられてクシャリと笑う。
その笑顔は、永遠と続く桜並木を連想させた。
桜が狂おしいほど咲き誇って、花びらが舞う。
そこに独り取り残されたみたい、綺麗なのに、、息がしづらくなる。
「夜桜く、!」
ぎゅっと夜桜くんのブレザーの裾を握る。
苦しいのに、辛いのに、この手を離したら吸い込まれてしまいそうだ。
「何でまた泣きそうな顔してんの…」
先ほどの笑顔とは裏腹に寂しそうにこちらに手を伸ばす。
その手が私の頬に触れる。
「帰るよ、あと…また名字に戻ってるんだけど?」
「あ、ごめん…。帰ろっか」
私はもう一度ブレザー裾を強く握りしめた。

