不思議に思いながら、同期に尋ねても、誰も何も教えてくれなかった。
 
 
 数日たったある日、ユリナが泣きながら紘平の元にやってきた。
 
 目の前に差し出されたの数枚の写真。
 
 自宅のユリナ宛に匿名で届いたらしい。
 

 それは、あの飲み会の夜の、女性とベッドで寝ている紘平の姿だった。



「それって…」

「ああ、同期にハメられたんだよ多分」

 紘平の飲み物に何か混ぜられてたかもしれない。

 証拠は何もないが、こうして2人で写真を撮られている以上、女性の他に回りに誰かいたのだろうと推測した。


 同期はひそかに紘平に嫉妬していた。

 そしてあの夜は一緒に飲んでいた。


 それだけで紘平は腑に落ちた。



「ユリナは狂ったみたいに泣きながら怒りだして、俺がいくらなだめても無理だった」

 信じてくれと言っても、証拠の写真がある以上、裸で寝ていたのは事実だろうと。

 元から嫉妬深いユリナは、ひとしきり紘平を罵った後、茫然としていたらしい。


「何度も謝ったし、ユリナの父親にも説明したけど、全くとりあってもらえなかった」

 父親も即座に婚約解消を申し入れてきた。


「何もかも失った、と思っていたけど…ユリナはなぜか婚約指輪を外そうとしなかった」

 聞きながらみのりは、その時のユリナの気持ちを察した。


「ユリナさんは…本当に先輩のことが好きだったんですね」

 紘平は伏し目がちになる。


 それは誰にもわからない。

 けれど、そのときのユリナには、紘平に対して強い思いがあったのは事実だと思っていた。