ベッドの中での温もりに幸せを感じていると、ふと視界にきらりと光るものがあった。


「あ…」

 みのりはそっとベッドを抜け出し、床に落ちていたものを拾う。

「どうした」

「これ…大切なものなんじゃないですか」


 それは昨夜、紘平が外した指輪だった。

 みのりはそっと紘平の手のひらに乗せる。


「……」

 紘平は指輪を見つめ黙っていた。


 肝心なことが、聞けない。

 想いが通じたというのに、そこは変わらない自分のいくじなさに溜息が出る。


「…これについて、話さなきゃな」

「…先輩が言いたくないなら…」

「いや、今までそうやってためらって、何回も後悔したから、もうしたくない」


 はっきりと言う紘平に、みのりは真剣な面持ちで頷いた。


 大丈夫、気持ちの準備は出来ている。

 何があっても、今の気持ちに嘘はないし、揺るがない。



 そう思ったとき、ルームフォンが鳴った。

「はい、もしもし」

 紘平が出ると、さっと表情が硬くなる。


 受話器を置いた紘平は、「ユリナが、呼んでる」と言った。


「あ…」


 ユリナは昨夜そのまま泊ったはずだ。

 伝言を伝えたにも関わらず一向に現れない紘平を探していることだろう。


「あの、私は大丈夫なので、言ってあげてください」

「いや」

 紘平は起き上がると、みのりに手を差しのべた。


「ちょうどいい、一緒に行こう」