「何度もって…」

「例えば、夏の合宿」

 合宿最終日、2人きりで星空を見上げたこと。

 これで話すのは最後かもと、みのりも想いが溢れそうになっていたことを思い出す。


「何か繋がりを作ろうとしたけど、篠田はスランプで悩んでいたし、邪魔出来なかった」

「あ…」


 あの時、紘平は確かに自分を励ましてくれた。

 そのときは、部長としての温かい対応だと思っていたのに。



「それと、紺野のことも気になってたし」

「大和のことは…」

「わかってる、友達だったんだよな」

 苦笑する紘平は、軽くみのりの髪を撫でて言った。

「年上だっていうのに、確認する勇気もなかったとか、ちょっと今になっては笑い話だ」


 同じことを思っていた。

「私も…先輩とマネージャーの関係を聞く勇気がなかったです」

「同じだな」

 紘平は目を細めて言った。


「俺たち、昔から両想いだったってことか」


 そんなオチ、と困った顔をする紘平にみのりは抱き付く。

「おわ、篠田?」

「嬉しい」

「俺も…だけど、気付くのがちょっと遅すぎないか? もっと早ければ…」


「いいんです」

 抱き締める腕に力を籠める。

 離れていた時間にも意味がある。


「それでも、嬉しい」


その間もこうして互いを想っていたのだから。