朝日がブラインドからわずかに漏れている。

 体温が心地いい。
 

 ゆっくりと目を開けると、そこに紘平の端正な顔がある。
 
 思いのほか近くて驚いた。
 

 軽く寝息を立てる彼を見つめていると、昨夜のことは現実なのだと受け止め始める。
 

 ずっと手の届かない人だと思っていた。
 
 そんな彼との情事を反芻していると、顔が熱くなってくる。
 

 もぞ、と体を動かし彼の胸元に顔を寄せる。
 
 なんて幸せな時間なんだろう。
 
 紘平と体温を分け合いながら、目覚める日が来るとは。



「ん……起きた?」

 寝起き声がかすれている。

 それすら色っぽく思えて、みのりはどきりとした。


「…おはようございます」

 軽く上向くと、自然と唇が重なる。

「おはよう」

 ふっと微笑む紘平に見とれてしまった。


「今日…仕事は?」

「休みです」

「そっか、よかった」

 今更聞いたけど、と紘平は眉を寄せた。
 
「俺もオフだ」


 何気ない会話が嬉しい。


 間を埋めるように、紘平はぎゅっとみのりを抱き締めた。

 沈黙すら幸せだとみのりは瞳を伏せる。



「…正直、もう会えないと思ってた」


 少しの沈黙を破ったのは紘平だった。


「え…?」

「卒業したらそれっきりだろうって」

 じっとみのりを見つめる紘平は優し気だった。

「…何度も後悔した、遠慮なんてしなければよかったって」

「遠慮って…」

「お前は知らないだろうけど」


 知るわけがない。

 紘平の気持ちが自分に向いていたなんて。