「私は先輩が好きです」


 どうしてこんなに好きなのだろう。


 見てるだけでよかったのに。

 いつのまにかこんなに膨れてしまった想いに自分でも驚く。



「ずっと…ずっと前から、好きでした」

 ようやく告げた言葉に、力が抜ける。

 とめどなく流れる涙をぬぐうまえに、紘平が唇でその線をたどった。


「先輩だけのものになりたいって…そう願ったらだめですか」

 長年留めて言葉は、いとも簡単に零れ落ちる。

「篠田」

 落ち着かせようとする紘平の手を握り、薬指のリングに触れた。


「これは誰との約束ですか」

「…し」

「私こそ、本当は先輩を自分だけのものにしたい…!」


 みのりがそうぶつけると、紘平は切なげな顔で見つめた。

 そして、自分の指に触れ強引にその指輪を外した。



「これでいいか」



 俺はお前のもの──。

 そうみのりに伝えている。

 呪縛が解かれたように、何度も頷く。
 

 みのりの頬に触れ、紘平はふたたび唇を重ねた。