スイートルームからの煌めく夜景が、紘平の顔を浮かび上がらせる。


 ドアが閉まる時間さえもどかしい。

 紘平はそれを待たずに、みのりにキスをした。

「……んっ」


 エントランスの壁に寄りかかり、紘平の首元に抱き付いて応えた。


 今まではとはちがう、強く荒々しいキスだった。

 呼吸まで奪われてしまう。

 頭の芯は痺れ、言葉が出てこない。


 ただ繰り返し、唇を求め合い、想いを確認していた。


 紘平がみのりの髪をかき乱す。

「…あいつの部屋で何してたんだ」

 絞りだすような声。

 紘平がこんなに焦れた様子になることは珍しい。

「なにも…」

 そう答えるけれど、さっきから目が潤んで、紘平がかすんでしまう。


 紘平は、嫉妬している。

 それを隠さずキスに乗せてきた。

 みのりの胸は一気に熱くなる。


 どうして私にきてくれるの。

 どうしてこんなふうに触れてくれるの。


 求めないはずだった、答えが欲しい。

 じっと紘平を見上げると、彼は苛立つように息を零す。


「…俺だけのコンシェルジュにしたいなんて言わない」

「先輩……」

「だけど他の奴に、簡単に捕まるな」

 睨まれるように見つめられ、心臓が激しい音を立てる。


 我慢できなかった。



「俺だけのって言ってください」

「…篠田」

「そうしてほしい。私もそうなりたい」


 涙がこぼれて、声が震える。