「……っ」

 するりと、背後から司の腕が伸びて来て、みのりの首元を抱く。

 驚いて、持っていたオープナーを落としそうになったとき、司がそれを片手でキャッチした。


「おっと」

 女性を抱いているのに、他のことにも器用に対応する。

 司は、女性に慣れている。

 本能的にそう感じた。


「つ…司さんっ」

 紘平よりいくらか華奢とはいえ、司も男性だ。

 もがいてもその腕からは、簡単に逃げられない。


「なに」

「な…なに、じゃなくて…放してくださいっ」


 しかし、司はみのりを解放する気はないようだ。


「放さないって、言ったら?」

「冗談やめてください…っ」

 背後から密着する司からは、爽やかな香りが漂う。

 耳元でくすっと笑い声が聞こえて、体が震えた。


 甘く童顔系な司だが、唇に浮かべる笑みが、サディスティックそのものだ。

 小悪魔といったら、ぴたりと当てはまる。


「篠田さん、落ち込んでるのかなと思って」

「え…? きゃ…」

 一瞬気を抜くと、くるりと向きを変えられ、背中に壁が当たった。

 正面から見た司は、今度は色気を含んだ微笑でみのりを見つめる。


 逃げたいのに、その目に見つめられ足がすくむ。


 強い欲に制圧される感覚。




「──ユリナさんが来たでしょ」


 司は目を細めた。