海沿いに佇むチャペルが、きらきらと光を放つ。
 

 ホテル敷地内にあるチャペルは、昼間はその海の景観、夜はイルミネーションで通年予約でいっぱいだ。


「あれ、チーフ、休憩ですか」

「うん、ちょっとね」

 カフェのスタッフもだいたい顔見知りだ。


 とはいえ、みのりがここに来るのは珍しい。

 少し時を作り、休憩に入ったみのりはホテル内のカフェから、その景色を眺めていた。


 今日も結婚式が行われていた。
 
 中庭では着飾った若者たちが、二次会を中庭で楽しんでいるのが見える。
 


 少し、気持ちを落ち着けたかった。
 
 ここ数日で、紘平への気持ちが盛り上がっていたが、ユリナに会ってそれが少し萎んでいくのを感じていた。
 

 紘平への気持ちは変わらない。
 
 けれど。


「私が知ってるのは大学時代の先輩だけ…」

 今の紘平のことは何も知らない。

 夢見る時間は終わったと言われているようで、みのりは複雑な気持ちを抱えていた。


 何度目かの溜息をこぼしたとき、耳に掛けていたインカムが鳴った。


「はい」

『篠田さん、フロントの駒沢です。お客様から篠田さんに連絡がありました』

「わかりました、すぐ伺います」

 立ち上がりながらお客様の部屋番号と名前を聞いて、一瞬戸惑った。


『エグゼクティブフロアに宿泊の、相沢司さまです』