ぼんやりとした意識の中、手を伸ばすと自分以外の体温に触れた。

 これは、と認識する前に、逆に体を引き寄せられる。


「……っ」

 驚いて目を開くと、目の前には紘平の顔のアップ。

「……せ」

 先輩、と声に出そうとするけれど、唇を動かしてしまえば触れてしまいそうな距離に緊張して詰まる。


 どうしよう、動けない。


 けれど、捕まった幸せがみのりを包む。



 いつの間にか眠っていたらしい。
 

 添い寝のつもりが、スクリーンカーテンの向こうに微かな朝日の気配を感じた。


 幸せだけれど、起きなければ。

 みのりは小さく身じろぎ、紘平の腕の中からの脱出を試みた。


 出来れば起こしたくない。

 身体をよじり、上手く抜け出せた…と思った瞬間。


「どこ行くの」

「え……わっ」

 ベッドから半身を出したところで、腕を引かれ、再びベッドの中へと沈む。


「せ、先輩、起きてたんですか」

 みのりを捕まえた紘平は、顔を近づけて、眠そうに笑った。


「今、起きた」

「すみません、起こしてしまったんですね」

 顔が近くてどきまぎしながら言うと、


「黙っていなくなるなよ」

 間近に迫った紘平の微笑が、乱れた前髪で見え隠れする。


 それがとても色っぽく、直視できない。

 こんな顔もあるのだ、と一緒にいるとますます夢中になってしまう。