「……寝るか」

「はい…」


 紘平が改めてみのりを抱き寄せる。

 顔が近づいて、鼓動は跳ね上がる。


 けれど、紘平がちゃんと寝付くために落ち着かなければ、とこっそり深呼吸をした。
 


 聞きたいことは山ほどある。
 

 左手の指輪。
 
 そして度々聞く、『ユリナさん』という女性のこと。
 


 でも今は──この時間を壊したくない。
 


 ほどなくして、紘平の寝息が聞こえてきた。
 
 こんなに間近で、紘平の寝顔を見れる日がくるなんて。
 

 みのりはそっと、紘平の頬に触れる。



「先輩……すきです」



 そう囁いた告白は、紘平の穏やかな息に溶けていった。