これは現実なんだろうか。


 夢かもしれない。


 さっきから、そんなことばかりが、みのりの頭の中を巡っている。


 キングサイズのベッドに横たわった紘平は、片手を伸ばしてみのりを呼んだ。
 
 ためらいがちに潜り込むと、思の外、紘平の顔が近くにあり驚いた。


「もっとこっちに来て」
 
 これは添い寝という距離ではない。
 
 互いの体温を感じ取れるくらい寄り添うと、みのりはどうしていいかわからなくなった。
 

 言われるがままに、紘平の腕の中に包まれる。
 
 微かなコロンの香りと、彼の匂いに目眩がした。


「まさかこんなふうに、篠田と添い寝するとはな」

 それは自分の台詞だと、みのりは頷いた。


「大学の頃なら、絶対にしてないな」

「……」


 それは紘平に彼女がいたからか。

 それとも、自分なんて眼中になかったということだろうか。


 どちらにしても落ち込む。


 みのりは黙ったまま、紘平の腕に深く埋もれた。


「絶対に……ですか」

 埋もれた声で告げる。

「ああ、篠田には彼氏がいただろ」

「えっ」

 思わず顔を出すと、紘平の方も不思議そうに見つめて来た。


「ほら、同じハードルの…紺野大和」

「あ……」

 瞬間、成美の話を思い出していた。

 紘平が、成美に2人の関係を聞いて来た、という。


「あいつと付き合ってたんだよな? さすがに彼氏がいる相手に、こんなことは考えない」

「ち、ちがいます」

 みのりは必死で首を振った。