「少しでもいいので、携帯の電源とか切って寝てください」

「それはまずいな、何か連絡が入るかもしれないし」

「……」

「わかった、わかったから、その切なそうな顔やめて」

 みのりの無言の訴えが勝ったらしい。


「ほんとですよ?」

「ああ、携帯はここに置いておく」


「…ベッドの方の電話も線を抜いておきます」

 これには紘平も吹き出した。

「念入りな付き添いだな、そんなに信用できない?」

「先輩、大人しく寝なさそうなので…」

 どうせ仮眠を取るなら、しっかりと取ってほしかった。



「なら、一緒に寝る?」

「えっ……」

 紘平は目を細めて、みのりを見つめた。

 冗談ではないらしい。


「そんなに心配なら、添い寝して、俺のこと見張ってればいい」

 みのりの返答も聞かず、おいで、と手を引いていく。


 決して強引ではないのに、その流れに抗えない。


 紘平の魅力のせいか、それとも自分がそれだけ彼に惹かれてるせいか。


 今は、どちらでもいい。

 繋いだこの手を、離さずにいたい。