宝石のような夜景を、ぐんぐんと下から追い抜いていくのを眺めていた。


 スイートに向かうエレベーター。
 
 まるで、自分の胸の高鳴りを表すように、上昇していく。
 
 好きな人に向かっていく。


 一度タイムカードを押し、私服に着替え、レストランに寄りサンドイッチを見繕った。

 プレゼンを三日後に控え、きっと紘平は食べることも忘れ、仕事に没頭しているはずだ。


 少なくとも、みのりがフロントにいる間、紘平が外出した形跡がない。

 きっとスイートにこもりきりなのだろう。


 単純に、紘平のことが心配だった。

 きっと少しの暇もなく、何も口にしていないはずだ。


 また疲労で倒れたりしないようにと、サンドイッチはせめてもの差し入れだった。



 エレベーターが開き、しんとしたスイートフロアを進んでいくと、心臓が次第に揺れていくのがわかった。


 紘平のスイートにたどり着く。

 インターホンを鳴らすと、すぐにドアが開いた。


「待ってた」

 ラフにシャツを着こなし、少しだけ疲れた顔を覗かせる。

 その姿はきちんとしたいつもの身なりとは違い、どこか色気があって、どきりとしてしまう。


「どうぞ」

 吸い込まれるようにスイートへと入る。